仮想通貨と税金の切っても切れない関係

仮想通貨と確定申告、税金、雑所得

なんだか切ないタイトルになってしまいましたが、

仮想通貨と税金…仮想通貨保有者にとっては、「儲かった」だけでは終われない、とっても切ない話なのです…

 

ここ最近、仮想通貨について、弊所でもご相談を受けることが多くなりました。

昨年は、“億りびと”なんていう言葉も生まれて、仮想通貨“利益”を享受された方が、巷に多く出現しました。私の身近でも、そのような話を耳にすることを思うと、仮想通貨を持っていることが、それほど特別なことではなくなってきているな、と感じます。実際に売買されているお客様に、パソコンやスマホアプリでの取引方法を見せて頂きますが、操作は非常に簡単、自分の儲けもリアルタイムで分かりますし、一種のゲームをしているような感覚を覚えます。私も、もっと早くにブームに乗っていれば今頃…と、個人的な心情は置いておいて…

 

 

さて、「儲かった!」と喜んでばかりはいられません。

「負担の公平」という租税の理念から、個人の担税力を示す「所得」には税金が課税されます。

要するに「儲けには税金がかかります!確定申告しましょうね!」ということです。

 

確定申告における仮想通貨の特徴は、

  1.  雑所得である
  2. 仮想通貨で発生した損失は、他の所得と損益通算できない

この2点にあると思います。

だから、切ない…

なぜなら、雑所得は、株式などの有価証券を売却した場合に適用される分離課税とは異なり、総合課税対象であるため、累進課税が適用されるからです。つまり、所得が増えるほど税率が上がっていきます。さらに、仮想通貨の損失は他のどの所得からも引くことはできません。(後ほど詳しく見ていきます。)

 

仮想通貨の所得計算

世の中の急速な仮想通貨の広まりに対応し、国税庁は、平成29年12月1日に『仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)』(以下Q&A)を公表しました。ここでは、このQ&Aに基づき、仮想通貨と税金について、確認していきます。

<参照:国税庁 個人課税課情報 平成29年12月1日「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」

 

仮想通貨を所有している人が、確定申告を行う必要がある場合は、大きく分けて次の3つのときです。

  1. 仮想通貨を売却したとき
  2. 仮想通貨で商品を購入したとき
  3. 仮想通貨と仮想通貨を交換したとき

 1.仮想通貨を売却したとき

「売却」とは、仮想通貨を日本円に換金することを指します。

【例】 3月10日  2,000,000円(支払手数料含む)で 4ビットコインを購入

    5月20日     0.2ビットコインを110,000円(支払手数料含む)で売却

 

【答】保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合、その売却価額と仮想通貨の取得価額の差額が所得金額となります。

〔算式〕

売却価格110,000円 - 1BTC当たりの取得価額(2,000,000円÷4BTC) × 売却数量0.2BTC = 所得金額10,000円

 2.仮想通貨で商品を購入したとき

仮想通貨を使って物を買ったときも、一旦、日本円に換金したものと捉えて損益を確定します。

【例】 3月10日 2,000,000円(支払手数料含む)で 4ビットコインを購入

    9月28日   155,000円の商品を購入するために、0.3ビットコイン(支払手数料含む)を支払った。

 

【答】保有する仮想通貨を商品を買うときの決済に使用した場合、その商品の価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。

〔算式〕

商品価額155,000円 - 1BTC当たりの取得価額(2,000,000円÷4BTC) × 支払数量0.3BTC = 所得金額5,000円

 3.仮想通貨と仮想通貨を交換したとき

仮想通貨どうしを交換したときも、一旦、その時点で日本円に交換し、新たに仮想通貨を買ったと捉えて損益を確定します。

【例】3月10日  2,000,000円(支払手数料含む)で 4ビットコインを購入

    11月12日  リップルを購入(購入時点のリップルの時価が600,000円)する際に、1ビットコイン(支払手数料含む)を使用した。

 

【答】保有する仮想通貨を、他の仮想通貨を購入する際の決済に使用した場合、その時点での仮想通貨の時価(購入価額)と保有する仮想通貨の取得価額との差額が、所得金額となります。

〔算式〕

リップル時価※600,000円 - 1BTC当たりの取得価額(2,000,000円÷4BTC) × 支払数量1BTC = 所得金額100,000円

※時価とは、他の仮想通貨を購入する際に支払う仮想通貨の総額(支払手数料含む)を日本円に換算した金額をいいます。

 

<トピックス> ~コインチェック「NEM」の補償金は課税対象~

コインチェックから「NEM」が流出した事件、その後、当社より補償金の返還が行われました。

この補償金については、平成30年4月1日、国税庁よりタックスアンサーが発表されました。

結論から言うと、補償金は課税の対象で、補償金が取得価額よりも多い場合、その差額は雑所得として申告が必要です。

 

【問】仮想通貨を預けていた仮想通貨交換業者が不正送信被害に遭い、預かった仮想通貨を返還することができなくなったとして、日本円による補償金の支払を受けました。この補償金の額は、預けていた仮想通貨の保有数量に対して、返還できなくなった時点での価額等を基に算出した1単位当たりの仮想通貨の価額を乗じた金額となっています。この補償金は、損害賠償金として非課税所得に該当しますか。

 

【答】一般的に、損害賠償金として支払われる金銭であっても、本来所得となるべきもの又は得べかりし利益を喪失した場合にこれが賠償されるときは、非課税にならないものとされています。

 ご質問の課税関係については、顧客と仮想通貨交換業者の契約内容やその補償金の性質などを総合勘案して判断することになりますが、一般的に、顧客から預かった仮想通貨を返還できない場合に支払われる補償金は、返還できなくなった仮想通貨に代えて支払われる金銭であり、その補償金と同額で仮想通貨を売却したことにより金銭を得たのと同一の結果となることから、本来所得となるべきもの又は得られたであろう利益を喪失した部分が含まれているものと考えられます。

 したがって、ご質問の補償金は、非課税となる損害賠償金には該当せず、雑所得として課税の対象となります。

国税庁HP「No.1525 仮想通貨交換業者から仮想通貨に代えて金銭の補償を受けた場合」

仮想通貨の取得価額の計算方法

ここまでで、所得金額の計算には、仮想通貨の取得価額、つまり買った時の価額を計算しなければならないことがわかりました。

さて、この取得価額の計算方法については、国税庁Q&Aによると、二つの方法が提示されています。

  1. 移動平均法
  2. 総平均法

原則は「移動平均法」です。

比較的簡単な計算方法は、「総平均法」です。

どちらの方法を採用するかは、納税者の選択が認められていますが、一度採用した方法は、途中で変更することはできません。

「去年は総平均法の方が所得が少なく算出できたから総平均法で、でも今年は移動平均法の方が少ないからこっちにしよう…」という選択は、残念ながらできない、ということです。

計算方法の選択については、初めて仮想通貨申告を行う年度において、十分に検討することをお勧めします。

 1.移動平均法

【例】 3月10日  2,000,000円(支払手数料含む)で 4ビットコインを購入

    5月20日    1.5ビットコインを売却(円に換算)した 

     11月30日    1,600,000円(支払手数料含む)で2ビットコインを購入

〔算式〕

・1回目の取得価額

2,000,000円 ÷ 4BTC = 500,000円(1BTC当たり)

 

・2回目購入する前の残高

500,000円 ×(4BTC-1.5BTC)= 1,250,000円(残量2.5BTC)

 

・11/30に購入後の1BTC当たりの取得価額

(1,250,000円+1,600,000円)÷(2.5BTC+2BTC)= 633,334円

※取得価額を計算する際に発生する1円未満の端数は切り上げ

 2.総平均法

上記「1.移動平均法」と同じ事例の場合の計算方法は次の通りです。

 

〔算式〕

(2,000,000円+1,600,000円)÷(4BTC+2BTC)= 600,000円

(一年間に取得した1BTC取得価額合計)÷(一年間に取得したBTC数量合計)=1BTC当たりの取得価額

 

仮想通貨は雑所得として申告

 雑所得=累進課税

雑所得は総合課税対象のため、累進課税です。したがって所得が増えるほど税率が上がります。(住民税と合わせて最高55%)

所得税の速算表

※所得税の他に復興特別所得税(所得税の2.1%)と住民税10%が課税されます

「これは、キツイ!!」・・・ですね。

対処法としては、高い税率の適用を受けないように、売却などの時期をずらして、各年分の所得を平均化する方法などがあげられます。

 雑所得=損益通算できない

仮想通貨の取引で発生した損失は、別の仮想通貨で発生した利益や、他の雑所得(公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金など)とは損益を通算して計算できますが、給与所得や事業所得など他の所得とは通算することはできません。

対処法としては、損失が発生した年に、利益が出そうな仮想通貨の利益を確定するなどして、所得の圧縮を図る方法があげられます。

確定申告に向けて、準備しておくこと

◎申告までに用意しておく書類(データ)

 ① 各仮想通貨交換業者の「レポート(取引記録)」(CSV)をダウンロードする

 ② ①のデータを仮想通貨の種類ごとに分けて整理、1コイン当たりの取得価額を計算する

 ③ 仮想通貨取引にかかった経費の領収書を保管する

   (例えば、仮想通貨取引のために買ったPCなど…私用と兼用であれば、家事按分が必要になります)

   ※経費に関しては税務署に明確に説明できる理由が必要です。

最後に・・・

仮想通貨保有者が給与所得者の場合、給与等の収入金額が2,000万円以下であり、かつ、給与所得以外の所得(仮想通貨取引による所得を含む)の合計金額が20万円以下である場合には、確定申告の義務はありません。

ただし、住宅ローン控除や医療費控除などの適用を受けるために確定申告を行う場合には、仮想通貨の取引所得がどれだけ少なくても、雑所得として合わせて申告しなければなりません。

これは大変だ!とお感じの方

弊所では、仮想通貨に関するご相談をお受けしております。

所得の計算方法など、わからない点、不安な点がある方は、お気軽にご相談ください!