節税の基本公式は
①プラス財産を減らす
②マイナス財産を増やす
の2通りであることは、前回お伝えしました。
さて今回は、“①プラス財産を減らす"方法についてお伝えしようと思います。
プラス財産を減らす方法として代表的なものは、生前贈与です。贈与の大きな特徴は、財産所有者の「あなたにあげます」という意思と、それを貰う人の「頂きます」という意思が反映されることです。財産をあげる人が亡くなってから発生する相続とは、この点において大きく異なります。贈与には、財産を減らして相続税を節税するという意味だけでなく、遺言書を書くまでには至らなくとも、生前に自らの意思をもって承継者を決めることができるという意味において、円満相続を実現する一つの方法と言えるでしょう。もちろん、特定の親族に偏った贈与は、逆に相続の際の争いの元となる可能性があるため、注意が必要です。
贈与には、年間110万円までは非課税となる「暦年贈与」の他に、様々な特例が用意されています。近年、贈与に関する特例が増設されていますが、これには、貯蓄率が高い高齢者世帯から、消費意欲の旺盛な若年世代に財産を移転させて、国の経済活性化につなげようという政府の方針が見てとれます。ちなみに総務省の家計調査によると、65歳以上の世帯平均貯蓄は2,499万円、全世帯平均1,798万円の約1.4倍となっています。(平成26年内閣府~高齢者の経済状況)
贈与の特例には次のような制度があります。
1. 居住用不動産の配偶者控除(2110万円まで非課税で配偶者へ贈与できる)
2. 相続時精算課税制度(2500万円まで非課税)
3. 住宅取得資金の贈与税の非課税制度
4. 教育資金の贈与税の非課税制度(1500万円までの教育資金が非課税)
5. 結婚・子育て資金の贈与税の非課税制度(1000万円までの結婚・子育て資金が非課税)
※3~5は平成31年までの期限付き特例
いずれの特例にもメリット・デメリットがあり、各家族それぞれ有効な方法は異なります。ですが、生前贈与を考える前に、どのご家族でも共通してまずやるべきことは、「財産の現状を把握すること」そして、「ご自身の老後マネープランをしっかり立てること」です。例えば、教育資金の一括贈与は、祖父母等から孫等へ1500万円までは非課税で贈与できるという特例ですが、その方法は、信託銀行などの金融機関に孫等の名義で教育資金口座を開き、一括で贈与した資金をその口座に預け入れて、孫等が教育費用を支払う都度、必要額を引出すというものです。この場合、金融機関に預け入れた資金は、制度上定められた教育目的以外の払い出しができない(目的外の払い出しは贈与税が課税される)のはもちろんのこと、贈与者である祖父母からの払い出しおよび中途解約ができません。仮に、祖父母が一括贈与を行った後、自身の老人ホーム入居費など、まとまった資金が必要になったとき、教育資金として預け入れた預金は自分のために使うことはできないということです。この点は見落としやすい論点ですので、注意する必要があります。
では、上記のような不安を解消するにはどうすればいいでしょうか?
実は、そもそも相続税法には、扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものは非課税財産とする規定があります。
相続税法第二十一条の三 (贈与税の非課税財産) 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。 二.扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの |
ここでいう教育費とは、学費や教材費、文具費などをいい、必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。この規定に基づき、教育費が必要な都度、祖父母がこれを負担しても、その資金提供には贈与税はかかりません。この場合には、孫の大学入学金や授業料などを祖父母自身の口座から直接振込し、振込票控えや預金通帳の履歴として資金負担した証拠を残しておくとよいでしょう。
繰り返しになりますが、生前贈与は十分な計画を立てて、自身のライフプランニングとのバランスを考えて行うことが大切ということを忘れないようにしたいものです。
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